目次
不倫相手に対する慰謝料請求を内容証明で送りたいけど、
- 請求の仕方がわからない
- 請求書面の作り方がわからない
- 内容証明の使い方がわからない
- 送った後の対応がわからない
この記事は上記のような疑問、お悩みにお応えする内容となっています。
不倫相手に慰謝料請求する方法(※)としては、大きく①口頭(直接、電話)で請求する方法と②請求したことが形(メール、書面)に残る方法があります。このうち②の書面で送る方法では内容証明で書面を送る方法があります。そこで、今回は、この内容証明を使った慰謝料請求の方法について解説したいと思います。
なお、不倫相手から慰謝料を効率よく獲得するにはそれまでの事前準備が極めて重要です。特に、不倫の証拠を集めていなければ請求を簡単に否定されてしまい、その後の交渉がとても難しくなる可能性が高いです。証拠が不十分の方は、慰謝料請求する前にきちんとした証拠を集めることからはじめてみましょう。
※別居・離婚した配偶者に対して慰謝料請求する場合も同様の方法をとりますが、この記事では不倫相手に慰謝料請求することを前提に話を進めていきます。
不倫相手に慰謝料請求する方法~内容証明とは
まず、内容証明が何なのかご存知ではない方のために内容証明について簡単におさらにしておきましょう。内容証明とは、いつ、どんな内容の文書が、誰から誰に郵送されたかを郵便局側が証明してくれる制度のことです。冒頭でも触れましたが、不倫相手に慰謝料請求する方法としては
■ 直接口頭で請求する
■ 電話で請求する
■ メールで請求する
■ 書面(請求書面)で請求する
の4つが通常かと思います。
このうち、これから解説するのが「書面(請求書面)」を使って慰謝料請求する方法です。そして、内容証明を使わずとも書面による慰謝料請求は可能ですが、内容証明を使った方がより確実に不倫相手から慰謝料を獲得できる可能性が高くなるのです。

不倫慰謝料を請求する際に内容証明を使うメリット
では、書面で不倫の慰謝料請求をする際になぜ内容証明を使った方がよいのか、内容証明を使うメリットをみていきましょう。
不倫相手に確実に内容を伝えることができる
電話やメールだとどうしても余計な話をしてしまいがちです。その結果、本題(慰謝料請求のこと)をうまく伝えることができない可能性があります。一方、書面だと伝えたいことだけを伝えることができます。不倫相手とやり取りしなくて済む分、心理的な負担も軽減できます。
また、後述しますが、内容証明を使うと、請求書面は配達員から不倫相手に手渡しで渡されます。仮に、不倫相手が中身を開封しなくても、不倫相手に渡りさえすれば不倫相手に内容が伝わったものとされます。つまり、不倫相手に書面に書いた内容を確実に伝えることができるのです。後日、言った・言わないのトラブルも防止できます。
心理的なプレッシャーをかけることができる
多くの方が、普段、内容証明を受け取る機会はそうそうないと思います。また、後述するとおり、書面には「法定措置を取る」などと記載します。つまり、内容証明の見た目や書面の内容から、不倫相手に心理的なプレッシャーを与えることができます。心理的なプレッシャーをかけることで話し合いをスムーズに運び、満足のいく結果を得られやすくなります。
時効の完成を猶予できる
時効の完成の猶予とは時効の完成を延長することです。不倫相手に対する慰謝料請求の時効期間は「あなたが配偶者と不倫相手の肉体関係の事実(不貞)と不倫相手を知った日から3年」です。
期間が経過して時効が完成すると慰謝料請求できません(※1)。ただ、この3年が経過する前に不倫相手に内容証明を送れば、内容証明が配達された日(※2)の翌日から起算して6カ月間は時効が完成しません。つまり、時効完成が延長されるというわけです。
※1 時効を完成させるためには単に期間が経過したことだけでは足りず、不倫相手が「時効が完成したため慰謝料を支払わない」という意思表示(時効の援用)を行う必要があります。
※2 内容証明は配達証明付きで送ります。内容証明が配達された日は、郵送で受け取る配達証明書で確認できます。
内容証明を利用するにあたって準備するもの
内容証明を利用する際は以下のものを準備します。
■ お金
(1279円※1枚の場合)
■ 印鑑
(※シャチハタ不可)
■ 用紙
(※材質・種類は問いません。サイズはA4が一般的。)
■ パソコンあるいは消えないボールペン
■ 封筒
【お金の内訳】
■ 基本料金:84円
(定型郵便、かつ、重量が25グラム以内の場合)
■ 一般書留の加算料金:435円
■ 内容証明の加算料金:440円
(※1枚の場合。2枚目以降は1枚につき260円加算)
■ 配達証明料金:320円
合計:1279円
㊟内容証明を送る際は、浮気相手に内容証明が配達されたこと証明する「配達証明」付きの内容証明で送りましょう。
内容証明の利用上の注意点
内容証明を利用するにあたっての注意点は2つです。
1つ目が、すべての郵便局で内容証明の手続きを行えるわけではない、という点です。内容証明を取り扱っている郵便局は、
■ あらかじめ指定された郵便局
のいずれかに限られます。手続きを行う前に、これから手続きを取ろうとする郵便局が内容証明を取り扱っている郵便局かどうか確認しておきましょう。
2つ目に、内容証明には一定のルールが設けられているという点です。
詳細は手続きを行う郵便局か以下のリンクでご確認いただければと思いますが、特に気を付けるべき点をピックアップしておきますのでよくご確認いただければと思います。
■ 原本1部、謄本2部を用意する
■ 謄本が2枚以上にわたる場合は、綴り目に契印が必要
請求書面(通知書)に書くべき内容【テンプレ付き】
それでは、ここからは「請求書面」に書くべき項目、内容について解説していきます。
請求書面【まとめ】
令和●年●月●日(①)
通知書(②)
(③)〇〇(都道府県)〇〇市(区)〇〇(町)〇〇丁目〇〇番地
〇〇マンション〇〇号室
■■■■ 殿
記
私(以下、通知人といいます。)は、✕✕✕✕の妻(又は夫)である●●●●です(④)。
通知人は、夫(又は妻)である✕✕✕✕の不貞行為を疑い、(興信所に依頼して)調査したところ、貴殿が_(平成・令和)年_月ころから、✕✕✕✕と不貞行為を開始し、_年(月)にわたって週に_回、______(など)において不貞行為を続けていることが判明しました(⑤・⑥)。
貴殿の行為によって、通知人と✕✕✕✕との婚姻関係は破綻し、通知人はそれによって多大な精神的苦痛を被りました。
貴殿の行為は、民法709条の不法行為に該当します(⑦・⑧)。
よって、通知人は、貴殿に対し、不貞行為に対する慰謝料として、金_____円の支払いを請求いたします。本通知到着後1週間以内に下記口座にお振込みください(⑨)。
振込先(⑩)
〇〇銀行〇〇支店
普通口座
口座番号 〇〇〇〇〇〇
名義人 〇〇〇〇
なお、上記期間内に全額の支払いがない場合は、直ちに法的手続きを講じますので、あらかじめご了承ください(⑪)。
(⑫)〇〇(都道府県)〇〇市(区)〇〇(町)〇〇丁目〇〇番地
〇〇マンション〇〇号室
●●●● ㊞
以上
①日付
内容証明を完成させた日を記載します。
②文書の標題
文書の標題はわかりやすいものであれば何でもよいですが、通常「通知書」とすることが多いです。
③浮気相手の住所、氏名
内容証明を郵送するには、不倫相手の住所、氏名を把握しておく必要があります。住所(マンション、アパートの場合は部屋番号まで)、氏名は正確に記載しましょう。
④あなたと配偶者との関係
あなたが浮気した配偶者の妻(又は夫)であることを記載します。
⑤あなたが不貞を知った経緯
あなたがどのような経緯から不貞を知ったのかを記載します。不貞は浮気調査によって明らかにします。自分で行うこともできますが、限界を感じた場合は探偵に相談、依頼してみましょう。
⑥不貞の内容(開始時期、期間など)
浮気調査や配偶者への聞き取りによってあなたが把握できた不貞の事実を記載します。不貞の意味や不貞と不倫・浮気との違いについては以下の記事でご確認ください。
⑦不貞によって精神的苦痛を受けたこと
慰謝料は精神的苦痛を金銭化したものですから、不貞によって精神的苦痛を受けたことを記載します。
⑧不貞が民法709条の不法行為にあたること
不貞は民法709条に規定する不法行為です。「不法」というワードを出すだけで不倫相手に心理的プレッシャーをかけることができます。
⑨慰謝料の額、支払い方法・支払い期限
慰謝料は
■ 離婚しない場合
→ 0円~100万円
■ 離婚する場合
→ 0円~300万円
が相場です。
最終的な金額は話し合い(話し合いで解決できない場合は裁判)で決めます。ただ、請求段階では不倫相手の減額交渉を見越して相場よりもやや高めの金額を設定しておくとよいです。また、支払い方法は口座振り込み、一括払いを原則とし、必ず期限を定めましょう。
⑩振込先
慰謝料の支払い方法を口座振込みとする場合は振込先を明記します。
⑪慰謝料を支払わない場合の措置
不倫相手が期限までに慰謝料を支払わない場合の措置(訴訟の提起など)を記載します。明記しておくと不倫相手に心理的なプレッシャーをかけることができます。
⑫あなたの住所、氏名、押印
最後にあなたの住所、氏名を記載し、氏名の横に印鑑(シャチハタ不可)を押印します。受取人の場合と同様に正確に記載しましょう。
慰謝料請求書面(通知書)【テンプレート】
上記が請求書面のテンプレートです。請求書面に書くべき内容は個別事情により異なります。テンプレートは参考程度にとどめ、個別事情にあった請求書面を作ってください。

内容証明の送り方
内容証明は郵便ポストに投函して送達することはできません。内容証明を取り扱っている郵便局へ出向き手続きする必要があります。この際、もっていくものは次のとおりです。
■ 請求書面3部
※原本1部、謄本2部
■ 封筒
※差出人、受取人の住所・氏名を記載したもの。封は綴じない
※住所を知られたくない場合は
- 代わりの場所を「気付」として書く
- 「〇〇郵便局留 〇〇行」などと書く
方法があります。
■ 印鑑
■ お金(郵便料金)
郵便局に着いたら、備え付けの「書留郵便物受領書」に必要事項を記入して請求書面、封筒とともに窓口に提出します。郵便局が受け付けると認証司がルールにしたがって記載されているかチェックします。
問題がなければ、郵便局員の目の前で原本を封筒に入れて封を閉じ、郵便局員に渡します。その後、会計を済ませ、郵便局員から謄本1部と問い合わせ番号が記載された「書留郵便物受領書」を受け取れば手続き完了です。
【ケース別】内容証明を送った後の対処法
請求書面を送った後は不倫相手からの反応を待ちます。その後は、不倫相手の反応別に適宜対応する必要があります。以下では、不倫相手の反応別の対処法についてみていきましょう。
請求内容を認めた場合
誓約書、あるいは示談書(いずれも原案)を作ります。作った後は、話し合いを切り出します。話し合いの切り出し方、進め方、誓約書と示談書との使い分け作り方などについては以下の記事で詳しく解説しています。
内容証明は受け取ったが反応がない場合
まずは、再度、内容を変えた請求書面を不倫相手に送ってもよいでしょう。それでも反応がない場合は、請求書面に記載したとおり法的措置を取ります。具体的には不倫相手の住所地を管轄する簡易裁判所に対して民事調停を申し立てます。
調停も不倫相手との話し合いで解決を目指す場です。ただ、間に裁判所という公的機関を挟むことで、冷静に話し合いを進めることができます。ただ、そもそも不倫相手が調停に出席しない、出席しても話がまとまらない場合は調停不成立となります。調停が不成立となった場合は訴訟を提起することを検討します。
不貞や故意を否認された場合
話し合いでの説得を試みます。この段階であなたは不貞や故意に関する十分な証拠をつかんでいるはずです。そこで、話し合いでは
■ 否認を続ければ裁判も辞さないこと
■ 裁判をしても負ける可能性が高いこと
■ 不合理な否認を続けると慰謝料の増額事由となること
を率直に伝えましょう。
また、場合によっては証拠(写しがよい)を提示することも必要となるでしょう。不倫相手としても話し合いでの解決を望んでいるでしょうから、すんなりと認める可能性があります。
なお、頑なに否認されたからといって感情的になってはいけません。あなたが感情的になれば浮気相手も感情的になって話し合いが決裂する可能性があります。話し合いが決裂すれば「調停➡裁判」と進まざるをえませんが、それでは解決までに多大な労力と時間がかかります。話し合いで解決を図るには感情的にならず、不倫相手の主張にも耳を傾けることが必要です。
慰謝料の減額・分割を主張された場合
話し合いで交渉します。
まずは、ここまでなら譲歩できるがこれ以上は譲歩できない、というあなたの基準を決めておきましょう。基準が曖昧だとずるずると不倫相手の主張に飲み込まれてしまう可能性があるからです。
また、不倫相手が減額、分割を主張する理由は「経済的な理由」であることが多いです。ただ、経済的な理由は慰謝料の減額事由ではありません。今の段階では支払えなくても、後日金策して支払うことだってできるわけです。「支払えない」、「経済的に困っている」などと言われても安易に譲歩してはいけません。
とはいえ、話し合いでの解決を目指す場合は一定の譲歩は必要です。「減額には応じないが分割(or期限の先延ばし)は認める」、反対に、「減額には応じるが分割は認めない」など柔軟に対応する必要があります。
なお、分割とする場合は一回の支払額を多く、支払い回数を少なくしましょう。慰謝料の金額が大きい場合は、未払いに備えて強制執行認諾付き公正証書(※)を作成することも検討しましょう。作成するには不倫相手の同意が必要です。
※強制執行認諾付き公正証書
もし将来、慰謝料を未払いにした場合は、不倫相手の財産(給料など)を差し押さえる手続きを取ることを約束させる公正証書のこと。裁判を経なくても、差し押さえ手続きが可能となります。
内容証明が返送されてきた場合
内容証明が返送されるのは次の場合です。
■ 不倫相手が内容証明の受取を拒否した
➡ 受け取り拒否
■ 封筒に記載した住所に不倫相手が住んでいなかった
➡ 宛所に尋ね当たらず、転居先不明
まず、受け取り拒否の場合は、「特定記録郵便」で請求書面を郵送します。特定記録郵便は配達員が浮気相手の郵便ポストに書面を投函し、かつ、郵便局が、書面を投函(配達)したことを証明してくれるサービスです。ただし、内容証明と併用することができません。そこで、後でどの書面を送ったのか証明するためにも、送った書面のコピーを取っておきましょう。
次に、宛所に尋ね当たらず、転居先不明の場合は、不倫相手の現在の住所を調べなおして改めて内容証明を送るという方法が基本的な対応となります。なお、個人で不倫相手の住所を調べることには限界があります。お困りの場合は弁護士や探偵に相談してみましょう。
内容証明の効果を高める方法
前述のとおり、内容証明を送ったとしても、必ずしも不倫相手からあなたが期待しているとおりの反応を得られるわけではありません。そこで、以下では、内容証明の効果を少しでも高めるための方法をご紹介します。
浮気調査する、証拠をつかむ
この冒頭でも触れましたが、不倫相手に対して慰謝料請求するには事前準備、すなわち浮気調査、証拠集めが極めて重要です。不倫・浮気されたからといって必ずしも慰謝料を支払わせることができるわけではありません。不倫相手に慰謝料請求するには、あなたが「不貞の事実」、不倫相手の「故意・過失」を証拠によって証明する必要があります。
証拠もなしに不倫相手を問い詰めても「一緒に食事はしたけど肉体関係はもっていない」、「独身と聞かされていたので既婚であるとは知らなかった」などと不貞の事実や故意・過失を簡単に否定されてしまいます。証拠がなければ裁判所に訴えることもできません。
そのため、不倫相手に否定されず、かつ、話し合いで決着をつけるためにはしっかりとした浮気調査を行って、隙のない証拠を集めておく必要があるのです。

弁護士名義で送る
もう一つは弁護士名義で送ることです。内容証明を弁護士名義で送るメリットは次のとおりです。
負担や不安から解放される
ほとんどの方が「請求書面を書くことは初めて」という場合が多いでしょう。そのため書き方がわからず、まずはインターネットや本で調べながら作成するという方も多いと思います。
ただ、調べる→作成する→調べる→作成する、という過程は思いのほか時間がかかりますし、手間もかかります。日常生活と並行しながら作成することは大きな負担です。
さらに、やっとの思いで作成した書面が正しい内容かどうか不安も残ることでしょう。弁護士に依頼すれば、こうした負担や不安から解放されます。
話し合いがスムーズにいく
弁護士は法律の専門家であることから、弁護士名義で送れば、不倫相手に無視すれば本当に法的措置を取りますよということも現実味をもって知らせることができます。
「できれば調停や裁判は避けたい」と思っている不倫相手も多く、不倫相手からの何かしらの反応を期待できます。また、弁護士に交渉まで依頼すれば、その後の話し合いから慰謝料の受け取りまでスピーディーに運ぶ可能性もあります。
弁護士に依頼した場合の費用
前述のとおり、弁護士に内容証明での慰謝料請求を依頼した場合、様々なメリットがあるわけですが、最後に依頼した場合にかかる必要についてみておきましょう。まず、弁護士に次の2点だけを依頼した場合は5万円~10万円(税抜き)が相場といえます。
① 請求書面の作成
② 内容証明の手続き代行
もっとも、ここには「不倫相手との交渉」は含まれていない点に注意が必要です。不倫相手との交渉も含めて弁護士に依頼する場合は上記以上の費用がかかります。
また、そもそも①と②のみの依頼を受け付けていない弁護士もいます。弁護士に依頼しようとお考えの方は、あらかじめ①と②だけでも対応してくれるかどうか確認しておきましょう。なお、①と②のみであれば行政書士に依頼することも可能です。費用は弁護士よりも若干安くなります。
今回の内容は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。