不倫・浮気は犯罪ではなく民法上の不法行為?その理由と4つの制裁

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この記事をお読みの方の中には、

  • 不倫(浮気)は犯罪でしょ!
  • 相手を死刑にしたい!
  • 何か制裁を加えたい!

とはらわたが煮えくり返る想いを抱えておられる方も多いことと思います。

人間関係の中で不倫(浮気)は最大の「裏切り行為」といえます。「今まで信じていたのに・・」、「尽くしてきたのに・・」、裏切られてしまっては上記のような思いを抱くのも当然です。

ただ、結論から申し上げると、不倫(浮気)は犯罪ではありませんでは、なぜ、不倫は犯罪ではないのでしょうか?記事の前半ではその疑問・理由について解説します。

一方、不倫は立派な「不法行為」です。そこで、不法行為とは何なのか、不法行為だと何ができるのか、パートナーや不倫相手にどんな制裁を加えることができるかについても解説していきたいと思います。

不倫(浮気)が犯罪ではない理由

まず、不倫が犯罪ではない理由を解説します。

そもそも、ある行為が犯罪だ!というためには、法律に「この行為が犯罪です」ということが明記されていなければなりませんこれを難しい言葉で「罪刑法定主義」といいます。たとえば、人を殺した場合に適用される殺人罪は刑法という法律の199条に規定されています。

(殺人)
第百九十九条

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

つまり、法律に「人を殺す行為は犯罪です」と明記されているわけです。では、不倫についてはどうでしょうか?この点、確かに、戦後直後まで、刑法には姦通罪(6月以上2年以下の重禁錮)という罪が規定されていました。

姦通罪は、夫をもつ妻が夫以外の男性と肉体関係をもった場合に、その妻と相手男性とを処罰するための罪です。しかし、男女平等の観点から妻だけ姦通罪で処罰されるのは不合理だという批判があり、昭和22年の刑法改正により廃止されています。

その他に、どの法律を見渡しても、姦通罪のような規定は存在しません。つまり、不倫は犯罪ではないということになります。

不倫は犯罪ではなく不法行為

不倫は犯罪でないとしても、不倫が許されるわけではありません。やはり、不倫が法律に違反する行為であることには間違いないのです。では、その法律とは何かといえば「民法」という法律です。民法の709条、710条をご覧ください。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した(①)者(②)は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、
前条の規定により損害賠償の責任を負う者(②)は、財産以外の損害(③)に対しても、その賠償をしなければならない(④)

709条、710条の①~④をわかりやすく言い換えると次のようになります。

①不法行為=不貞 
②パートナー、不倫相手
③精神的苦痛、慰謝料
④慰謝料を支払わなければならない

不貞とは?不貞が禁止される理由

不貞とは、パートナーがその自由意思で、あなた以外の第三者と肉体関係をもつこと、をいいます。不貞は「貞操義務違反」とも呼ばれます。この貞操義務について直接的に定めた法律・規定はありませんが、民法では

■ 重婚を禁止していること(民法732条)

■ 夫婦間の同居・協力・扶助義務を定めていること(民法752条)

■ 不貞行為が裁判上の離婚理由になること(民法770条1項1号)

などから、夫婦は互いに貞操義務を負っていると考えられています。これが、不貞が禁止される行為、法律違反にあたる行為といわれる理由です。

不貞が不法行為である理由

そして、前述のとおり、不貞は慰謝料請求の対象となる不法行為でもあります。では、なぜ、その不貞が不法行為にあたるのかといえば、それは、不貞により、あなたがもつ「婚姻共同生活の平和を維持する権利又は法的保護に値する利益」が害されるから、だと考えられてます(最高裁判所平成8年3月26日判決)。

もっとも、この考え方によると、上記の権利利益が消滅している場合の不貞は不法行為にあたらない、との考え方をとることも可能です。上記の権利利益が消滅している場合とは、夫婦の婚姻関係が破綻している場合です。

なお、不貞と肉体関係を伴わない不倫・浮気とは意味が異なります。基本的に肉体関係を伴わない不倫・浮気は不法行為にはあたらず、慰謝料請求することができないことに注意が必要です。

不貞は裁判上の離婚理由の一つ

不貞は不法行為であること以外に裁判上の離婚理由の一つでもあります(民法770条1項)。

(裁判上の離婚)
第七百七十条
①夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚尾訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき
二~五 略

不貞が裁判上の離婚理由ということは、裁判で不貞を証明できれば、パートナーの意思にかかわらず離婚することができるということです。

犯罪(刑罰)以外の4つの制裁

不倫が犯罪ではないといっても、犯罪の刑罰と同じように「何らかの制裁を加えたい」と考える方も多いと思います。そこで、以下では、パートナーや不倫相手に科すことのできる4つの制裁について解説します。

慰謝料請求

まず、多くの方が考えることが慰謝料請求ではないでしょうか?経済的なダメージを与えることができるのはもちろん、話し合いや裁判の過程で、パートナーが過去に行ってきた行為と向き合わせ謝罪を求めることも可能です。不倫慰謝料は「50万円~300万円」が相場です。

誓約書、示談書にサインさせる

次に、誓約書、示談書にサインさせることです。誓約書、示談書には慰謝料のことのほか、パートナーや不倫相手に自分の過ちを認めさせ、あなたに謝罪させる条項を設けることができます。誓約書、示談書にサインさせることができれば、立派な制裁になりえます。

子どもとの間に「距離」ができてしまう

自分自身が不法行為をしているわけですから、立場上、将来に渡って子どもに対してやっていいこと、悪いことのしつけができなくなるでしょう。子どもの年齢によっては、子どもの方から距離を取られてしまう可能性があります。

社会的な地位や信用を失う

最後に、社会的な地位や信用を失ってしまうことです。芸能人のニュースなどを見てもわかるように、不倫に対する世間の目はとても厳しいものがあります。

不倫したことが周囲にばれると、これまで築き上げてきた地位や信用は一気に崩れ落ちる可能性があります。親しい友人からは距離を置かれ、身内である親族からも厳しい非難を受けるかもしれません。

社内不倫の場合は、休業や配置転換などを命じられたり、出世・昇進に影響が出ることも考えられます。こうしてみると、人によっては慰謝料請求よりも厳しい制裁となることも考えられます。

なお、あなた自身からSNS等で不倫の情報を拡散することはやめましょう。名誉棄損罪、侮辱罪などで検挙されてしまう可能性があります。

不倫されたかも?と感じたら

最後に、不倫されたかも?と感じた場合の対処法についてご紹介していきます。前述した慰謝料請求する際や誓約書、示談書を作る際に必要となるステップですので、ぜひチェックしてみてください。

自分で調査してみる

まず、できる範囲で自分で調査して証拠を集めてみることです

もっとも、ケースによっては、ご自分で調査すべきでない場合、つまり、探偵に調査を依頼した方がよい場合もあります。ご自分で調査すべきでない場合に無理して調査するとバレる危険が高くなります。そして、一度バレてしまうと、その後の調査や証拠集めを極端に難しくしてしまいます。まずは、自分で調査すべきかどうかの見極めが大切です。

探偵に相談・依頼する

自分で調査すべきでない場合や自分で調査できない場合は探偵に相談してみましょう

相談前に、今の状況や気持ち、今後の希望などを整理し、相談に臨むとよいです。できる限り、複数の事務所に脚を運んで相談し、比較検討した上で自分に合った探偵を選ぶことが探偵選びに失敗しないためのコツです。

まとめ

今の我が国の法制度上、不倫(不貞)は犯罪ではありません。ただ、民法上の不法行為ではあります。人を殺す行為も怪我をさせる行為も不法行為です。また、不倫はされた方の心や精神をずたずたにします。その意味で、不倫は殺人・傷害などと同じくらい違法性のある行為だといっても過言ではありません。

もし、慰謝料請求などの制裁を考えている場合は、まずは不倫の証拠を集めることが先決です。証拠は自分で集めることが可能ですが、調査の目的によっては自分で調査することに限界があります。証拠集めに困った場合は探偵に相談、依頼することを検討してみてみましょう。

この記事を書いた人

小吹 淳

こぶき行政書士事務所 行政書士(登録番号 佐賀県22410162)
離婚業務を中心に取り扱っている行政書士です。離婚公正証書、離婚協議書、別居合意書、面会交流契約書、示談書、誓約書等の書面を作成したり、チェックしたりしています。ご相談は回数を問わず「無料」です。ご希望の方はお気軽にお申しつけください。